初めてのPC水冷化(7) - クーラントについての考察
水冷マシンは循環するクーラントが必要です。
クーラントの成分にもいろいろあり、それぞれ特徴があります。
EG,PG,純水
クーラントの主構成成分は大きく3つに分けられます。
- EG: エチレングリコール
- PG: プロピレングリコール
- 純水
サーマルテイクなどの PC 用冷却パーツを販売している会社からは、PG6%含有のものが販売されています。
EG: エチレングリコール
自動車の冷却水に使われるものです。
エチレングリコールは毒性が高いので、廃棄するときもそのまま排水に流すことは禁じられています。
誤飲厳禁。
PG: プロピレングリコール
環境低負荷、というふれこみでこれも自動車やバイクの冷却水に使われます。
ブラインと呼ばれる、床暖の循環水に使われるものもあります。
食品添加物としても使われているものなので、安全性は高いです。
純水
純水は、不純物をほとんど含まない高純度の水です。
ホームセンターでもバッテリー補充液、クーラント希釈用に精製水という名前で 2 リットル 300 円程度で購入できます。
実は EG,PG と比べるとクーラントとしての冷却効果が高いのは純水です。
ただし純水は金属を腐食させてしまうので、そのままではクーラントに不向きです。
各原料による熱伝導率
PG、EG、純水のうち、冷却効果は純水が一番高いです。
それでも PG や EG が使われるのは、不凍性能のためのようです。
水は凍ると体積が増えてしまうため、ラジエータや水路を破損させる恐れがあります。
そのためクーラントには少量のグリコールが混ぜられ、凍結温度を 0℃ 未満に下げています。
またグリコールには防錆効果あると誤解されがちですが、PG や EG にその効果はないようです。
PG、EG を主原料とするクーラントも、防錆剤は別に添加されています。
PG & EG と純水の粘度
PG、EG は液体ですが多少もったりしています。
触るとちょっとベタつくくらいですが、PC 冷却用の小さなウォーターポンプにとってはかなりの抵抗になります。
PG55%のクーラントをそのまま使ってみたら、PWM 制御 50%の出力では流れていかないくらいの抵抗でした。
慌てて 100%出力に切り替えましたが、それでも流速が 1L/分程度。。。
クーラントを少量抜き取り、純水で希釈を繰り返したところ、同じポンプ出力でも流速が上がり冷却効果も上がりました。
結局何を使えば良いのか
黙って PC 用のクーラントで良いと思います。
冷却性能、防錆効果、不凍効果と全部揃っていますから。
自動車用クーラントと比較するとお高いですが。
安く入手できる自動車用クーラントを、 5%くらいまで希釈して使うのもありだと思います。
ただ、寒冷地に住んでいない限りは PC 用クーラントに不凍効果は要らないと思います。
なのでグリコールを含まないクーラントを探してみたところ、レース用のクーラントがグリコールを含まず、防錆成分を含んでいることがわかりました。
PC 用が良いのでは、といいつつバイク用を使う
ELF のレーシングクーラント。
EG,PG を含まず、防錆剤が添加されています。
色も無色透明なので水路に色移りしてしまうこともなさそうです。
値段は 2 リットルで 2,700 円程度。高いけど容量単価は PC 用の半額くらいです。
グリコールを含まないので 0℃ で凍結します。
EG を含まないので環境に優しいのかと思いきや、防錆剤の2-エチルヘキサン酸ナトリウム
というやつが結構な毒性らしく、気軽に捨てることはできない模様・・・
水路を水道水でフラッシング後、精製水でうがいしてから流し込みます。
参考までに変更前後の温度変化を測定。
今回クーラント交換にあたって水路の引き回しを変更し、リザーバも大きいのにしたので参考程度に。
水路内のクーラント量が多いほど温度は上がりにくくなるはずなので。
うーん、あんまりかわらんな。
だがレーシング用はやばいかも
クーラントの防錆剤は、水路の内壁に薄い膜を作ります。
この膜は熱や振動に弱いです。
が、バイクレースなんて熱と振動しかありません。
となると、熱や振動が加わっても膜が剥がれにくいように、強力なものが入っているのかも・・・?
そして2週間後! なんと水路内が白く詰まり始めました! キャー!!!
そして入れ替える
完全に失敗です。
とりあえず大量の水で洗浄して、PG を 5%まで薄めて使います・・・
やっぱり PC 用のクーラント買おうかな。
結論
失敗したくなければ、PC 用使えってことですね。
だが、まだ挑戦は続ける!